Photographed by Tomoyuki Kishino
黒田 大祐リポート
天神山は小さい山です。そして静かな所です。制作や思索には適した場所で、ここでレジデンス出来た事は非常に幸運であり、言葉にはできない大きなものを得たと思っています。私は、天神山の麓の回転寿司屋で北海道の奥深さを感じましたが、天神山アートスタジオは、そこで出る寿司の印象に似て、小さい山の上に大きいネタがのっている(小さいシャリに大きなネタ)。例えていえばそんな感じの、とても良い施設です。おそらく、多くのアーティストにとって居心地のいい環境であり、新鮮な感覚を得られる場所だと思います。
私が参加したのは、国際公募のレジデンスだったこともあり、スペインとマレーシアのアーティストと一緒になりました。もともと滞在していたイギリスのアーティストも含めて、みんなで食事する機会が何度かありました。私は調子に乗って、彼らに3つの重要な日本の詩を伝えました。「酒はのんでものまれるな」「咳をしてもひとり」「さよならだけが人生さ」。ほとんど冗談で伝えたこの3つの詩は、しかし、レジデンスの束の間の出会いを象徴するように、合い言葉の様に飛び交い、また、私の心の中で、いまだ響いています。
レジデンスに参加して、何を得たかはわかりません。もちろん、作品は造ったし、多くのインスピレーションを受けました。けれど、それだけではない何かを得ました。それは出会いかもしれないし、ツルツルに凍ったアスファルトの上で転けて初めてわかるような感覚かもしれません。ともかく、レジデンスプログラムは素晴らしいものでした。私は、そこで何を得たのか確かめる為に、もう一度、天神山に行かなければならないと思っています。
和訳:齊藤ふみ
<黒田大祐 – Daisuke Kuroda>
1982年、京都府生まれ。広島在住。広島市立大学大学院卒業。橋本平八「石に就て」の研究で博士号取得。主な個展「ばんじいしころ」(旧日本銀行広島支店、広島、2014)、主なグループ展に「対島アートファンタジア2014」(厳原町周辺、長崎、2014)、 横浜トリエンナーレ2014連携企画「東アジアの夢」(BankART1929、横浜、2014)。
※国際公募で選ばれた3名のアーティストのうち、来日予定であったPei-Ju Yehが本人の事情により不参加となったため、急遽次点の黒田大祐氏が参加となりました。
<ゲスト・コーディネーター齊藤ふみのコメント>
日本在住ながら初めて北海道にやってきた黒田は、資料やフィールドワークに加えて、札幌に住む人々にインタビューを行いました。雪にインタビューする/雪になってインタビューに答える作品『雪にきく』と『雪の語り』では、何も語らない雪を中心にインタビューが繰り広げられます。『札幌の風景』では、吐息で蝦夷松と林檎の木が描かれ、儚く消えていく様子が映し出されます。
人間と雪、フィクションとノンフィクションなど、人口(Artificial)/自然(Natural)というテーマがユーモラスに描かれました。
<Comment from guest coordinator Fumi Saito>
Japan based Kuroda visited Hokkaido for the first time. He interviewed people living in Sapporo as well as doing research and fieldwork. Kuroda developed a work in which he interviewed snow, titled “Asking the Snow of Sapporo Video( 15min ) 2015”, and a work in which local residents became snow and interview responses, titled “The Snow of Sapporo Speaks Snow, audio 2015” . A series of interviews were carried out with snow, which is usually silent. In the work “Landscape (Sapporo)”, he made drawings of yeddo spruce and apple trees by breathing air over a cut out sheet placed on a cold window.
‘Humans and snow’ and ‘fiction and nonficton’. Themes of the artificial and nature expressed through humour.