概要
さっぽろ天神山アートスタジオは、札幌市の中期滞在宿泊施設「旧札幌天神山国際ハウス」を修繕し、国際的なアーティスト・イン・レジデンス(*1)(以下、AIR)事業のできる文化芸術施設に用途を変更、2014年夏、札幌国際芸術祭2014の開催に伴い文化芸術施設として誕生しました。
天神山緑地内の自然豊かで静かな公園環境の中に、市内、国内外のアーティストや文化芸術に関する研究者など(*2)が滞在しながら制作や調査・研究を行うための<滞在スタジオ(有料)>が13室(*3)あります。創造的活動を行う人に対し一時的な滞在型の制作環境を提供する支援施設であり、これら創造的活動と市民との交流、市民の自発的な活動の実現、支援を目的とした新しいタイプの文化芸術施設です。
滞在スタジオだけではなく、市民の活動のための<交流スタジオ(有料)>が3室併設され、滞在アーティストなどの成果発表、制作のプロセスを共有する、公開するなどの交流を促進するプログラム、イベント企画、実施を専門人材がコーディネートしています。
さらに、施設1Fのロビー空間は緑地公園の無料休憩所として常時開放しており、どなたでも気軽に立ち寄ることができるため、施設に集う三者三様の活動が混在するユニークな場を創出しています。この施設独特の雰囲気と、札幌、北海道の地域の気候・歴史・文化といった多様な特色があわさり、日本におけるリサーチや滞在制作のための新しい拠点、AIRの現場のひとつとして国際的なアーティストなどから注目されはじめています。
(*1)アーティスト・イン・レジデンス(AIR)は、アーティスト(創造的活動を行うもの)の移動を促進する事業やしくみのことを指す。創造的活動を行うものにとって「一時的な移動」の機会は自身の活動を活性化させキャリア構築に有効であると理解されている。AIRの起源とされるのは、17世紀にフランス政府が新進アーティストに対する奨学金のひとつとして「ローマへの旅行の資金と機会」を与えたことであり、以降、欧州を中心にポストアカデミーとしての役割や位置づけ、奨学金に代わる賞与、アーティストの活動を支援する精神を受け継ぎながら世界中に広がった。日本は遅れること1990年代に、国際交流基金、文化庁がアーティスト育成、創造的活動への支援ならびに文化外交の新しい手段として事業モデルを全土に拡散した。現在までに、行政、民間、個人など多彩な運営体制のもと、全国で事業運営が行われている。また、アーティストがある地域に一定期間滞在することの副産物として現れる地域振興、地域活性化を狙った事業にAIRが導入されるようになり、創造的活動を行う人への支援という理念を尊重しながら、各地で開催される国際展、地域コミュニティ再生の事業の爆発的な増加と連動してAIRというしくみが取り込まれている。そこにはそもそも文化芸術活動が表現の当事者以外の他者に与える影響への期待とともに、「滞在制作という活動形態」「地域性を取り込んだ、または起因する作品や活動」のもたらす文化芸術事業のアクセシビリティの手段になりうる側面を活用している。この傾向は市民社会における文化芸術の位置づけの違いからか、アジア圏、日本独自の展開であり欧米
のAIRとは趣の異なる特徴といえよう。
(*2)美術、音楽、工芸、演劇、ダンス、文芸、写真、映像、デザインなどの分野で創造的な活動を行う方。
(*3)AIR事業のためのアートスタジオ施設としては日本国内で最大規模(2015年6月時点)。スタジオ数を活かし複数分野の関係者、表現者、アーティストなどが同時に滞在するため、滞在者同士の日常的な交流が自然と生まれている。また、市内の多様な文化芸術活動、情報の行き交うハブ施設として機能しはじめている。
施設案内
1階:<共有スペース> ①談話交流スペースA、 ②交流サロン、 ③展示スペース
さっぽろ天神山アートスタジオが企画するイベント、ワークショップなどの交流プログラム、滞在アーティストによる作品展示や成果発表、公開制作などを行います。また、公園散策の休憩所、仲間同士の集う場所として、どなたでも利用できるスペースです。(無料)
①談話交流スペースA:大きな窓越しに公園の木々を眺められる休憩スペース。滞在しているアーティストの食堂としても使用します。
②交流サロン:みなさんの憩いの場として自由に出入りしていただけます。
札幌、北海道、アートに関する書籍、カタログ等を共有スペース内で閲覧でき、宿題をする、読書をするなど自主的な「自由研究」のためにも利用できます。
一角にはこどもからご年配の方まで、ゆっくりと寝転がることのできるスペースがあり、こども用の本、おもちゃ、楽器などがあります。
アーティストによる公開制作、ミーティング、ワークショップ、イベントなどのプログラム会場として使用することもあります。
③展示スペース:主に、滞在アーティスト等の作品展示や成果発表、活動報告の場として使用します。
(*貸しスペースではありません。)
⑥調理室:滞在スタジオ使用者が使用できます。
2階:滞在アーティストが使用します。
(滞在スタジオ使用者以外は原則2階以上への立ち入りはできません)
⑦談話交流スペースB:滞在アーティスト同士の交流の場として使用します。
⑧洗濯室:滞在スタジオ使用者が使用できます。
- ④交流スタジオ(A,B,C):作品制作、会議などで原則どなたでも使用できます。
- ⑤滞在スタジオ(A,B,C):長期間の滞在制作、調査などが行えます。