7月末に開催した、2018年の天神山アートキャンプ。
小学校5年生から中学校2年生までの子どもたちを対象に、講師/アーティストとして、関川航平さんを迎え、子ども向けワークショップを行いました。
遅ればせながら、その様子をお伝えしたいと思います。
講師/アーティストの関川航平さんのイラストをメインに据えたこちらのチラシ。
その視覚的なインパクトのおかげか、今年もたくさんの方々から参加のご応募を頂戴しました。みなさまありがとうございました。
たいへん残念ながら、全員は受け入れることができなかったのですが、なんとか定員を増やして、総勢29名の参加者を迎えることができました。
キャンプが始まってしょっぱなから、子どもたちに、言語学的なアプローチで「私たちはいったい何を見ているのか(見えていないのか)」という話をする関川さん。
「マッキー」という言葉を知っているからマッキーを捉えられて、「床」という言葉を知っているから床を捉えられる。
「マッキーを見ているときにも床は目に入っているのに、”床”と意識して見たときの床とは、見え方が全く違うよね」といったことを丁寧に説明します。
そこで、まずは「名前」に注目して、「名前を呼べるもの、呼びづらいもの」をスタジオの中で探してみよう、という「名前でみる」課題が提案されました。
みんなで、スタジオには何があったか、ということを共有したあとに、「名前でみる」以外の見方はどんなものがあるかを考えながらみてみよう、と、外に出て散策しました。
外は30度近い気温で、乾いた北海道の夏らしいお天気でした。
他の人に伝えようとしたときに、どうしても”こぼれ落ちてしまうもの”についての話を子どもたちに伝える関川さん。
私たちは、何かを見たときに、「テレビ塔を見たんだ」といったように、言葉にすることはできますが、その言葉から伝わる情報というのは、ほんとうにごくわずかなものです。
近所の銭湯から帰ったあとは、夜ご飯です。
初日の夜ご飯は、ビビンバとスープでした。
ご飯の後は、自由時間。
みんな卓球をしたり、トランプをしたりと、楽しんでいました。
2日目の朝食です。
おにぎりにおかず、味噌汁と、和風の献立です。
初日を振り返りつつ、より核心をついた話をする関川さん。
前述したような、”こぼれ落ちてしまうもの”に言及するのがアーティストだと思っている、ということを語ってくれました。
お話のあとは、外に出て、自分なりの見方について考えてみる時間でした。
午後に、みんなでかき氷を作って食べました。
暑い日には最高のおやつですね。
そして、子どもたちに、この2日間に考えたことや、見たもの、発見した見方について話してもらう時間をとりました。
2日目の夜ご飯は、天神山名物(?)の流しそうめん。楽しく美味しくいただきました。
そしてなんと、2日目の夜は、スタジオ内のどこでも、自分の好きなところで寝ていいという、「寝る場所を見つけてみる」ことをしました。
みんな思い思いの場所でおやすみです。
最終日の朝ごはんは、自分で作るサンドイッチです。
お腹がいっぱいになったら、最後の課題「ぼんやり見る」、です。
何かを見ているときの、自分の状態を観察するという、内省的な内容です。
子どもたちには、何が見えているのでしょうか。
最後に、3日間の振り返りと、「見ること」についてのお話をする関川さん。
「こんなに長く一緒にいた家族、友達なのに、同じものを見ていても、全然違うものを受け取っている」ということ、その共有不可能性について。
しかし、「初めて会った人なのに、こんなにも同じものを受け取ることができている!」という経験だってあるということ。
「これから、いろいろ幸せなことや不幸せなことが起こると思うけど、自分で自分の見てるものくらい、きちっと把握して、大切にするのがいいと思う。」といったお話で、締めました。
このワークショップに参加した子どもたちは、将来、どういうことを考えていくのでしょうか。
「みる」について考える3日間でしたが、参加したその日から、まるっきり考え方が変わるという性質のワークショップではないような気がしています。
時間が経過してから、じわじわと自分の中で意味が大きくなっていく、”くさび”のような性質を持ったワークショップだったのではないでしょうか。
子どもたちと私たちにとって、この3日間が、絶対になくなることはない、ある種の経験として共有されたことは、なかなかに感動できることなのではないかと思っています。
山田
アーティスト/Artist
関川航平 / Kohei Sekigawa http://ksekigawa0528.wixsite.com/sekigawa-works