ラへーズ(Rahic)はよく知らない環境に身を置いた時、いつも自分が一匹の犬になった様な気持ちになります。未知の世界で躊躇い、どちらの方向に進めばいいのか解らなくなりますが、ためらいの過程の中で、周囲の環境の移り変わりを感じ取った時の感覚は深く心に刻まれると気づきました。
日時:2018年11月23日(金)〜12月9日(日)
オープニング:11月23日(金)15:00
アーティスト・トーク:11月23日(金)15:30〜16:30 ごろ
*鼎談形式:ゲスト/穂積利明(キュレーター、北海道立近代美術館)
台湾で彼のことを知らないアーティストがいないほど、多くのアーティストから慕われ、台湾原住民出身のアーティストとしてはじめてファインアート・シーンで評価され活躍するラヘーズ・タリフのこれまでの活動を紹介するアーティスト・トーク。その後、キュレーターの穂積さん、さっぽろ天神山アートスタジオの小田井が加わって今後の展開や、札幌での滞在制作について語り合います。
会場には、今回の交換プログラムのパートナー、TEC LAND ARTS FESTIVALのシュールン・ウーも参加し、台湾台東エリアでのアーティストやフェスティバルの様子も紹介します。
会場:さっぽろ天神山アートスタジオ 1階
==
Rahic Talif/ 拉黒子・達立夫 / ラヘーズ・タリフ
アーティスト 台湾
協力:Tailing Dawn Artists Village, Taiwan East Coast Land Arts Festival 2018
【プロフィール】
花蓮阿美(アミ)族港口部落出身で、現在は制作活動に専念している。対等主に木の彫刻、装置、行為、建築、家具、部落文化の再生、先住民社会文化評論等といった領域で活躍しており、国内外の芸術展、パブリックアート制作にも多数参加している。作品は主に海洋文化の特質と部落の伝統的な要素を含んでおり、洗練された彫刻のラインと的確な語彙で、グローバルな問題に対して質問を投げかけており、更には民族間構造のほころび、社会環境の移ろい、それらの現状に対して、自分の行為と芸術作品を使い、オーディエンスの内省的な感情を引き出している。
過去にACC(アジアンカルチュラルカウンシル)のフェローとして、NYにレジデンス滞在、そのほか海外での活動も多く、2019年にはドイツで展覧会を予定している。日本/札幌・北海道には2008年北海道洞爺湖で開催されたサミットと同時期に実施された「先住民サミット」参加して以来2度めの滞在となる。
2018年度秋の招聘AIRプログラムについて
==
成果展覧会について_ラヘーズ・タリフ
私の作品はほとんどが海をはじめ、土地、環境、文化に注目したものです。体を使う労働を通じて漂流木を拾い作品の材料にしていますが、ここ10年ほどは「海のゴミ」の存在も無視できなくなり、海岸でサンダルやプラスチック、ガラス、レンガ、釣り糸、そして鉄筋など、そこに最も純粋な美しさを見出して拾うようになってきています。
陸地に視線を戻し北海道にやって来ましたが、まず初めに博物館や美術館に行き、この土地の過去、文化、民族、現代などを目にして様々な衝撃を受けました。しかし最も気をひかれたのはここでの生活や食、興味をそそる様々な包装紙などの環境で、リサイクルの段ボールや普段使われる紙の箱などをはぎ合わせて作品を作りました。古さの象徴である伝説は現代という洪水に飲み込まれてしまっていますが、作品では自然のサイクルと人為的な制作の対比を表現したいと思っています。
そして最も興味をそそられたのが、ここでの「木」の全てです。最初に来た時、色彩豊かな木々を目にしましたが、季節の移ろいにともない、地面が赤や黄色の落ち葉で覆いつくされるようになりました。私たちの言葉で落ち葉は「ラカウ」といいます。私たちにとって、その昔ゴミといえば落ち葉と貝殻だけでした。それから、台風による数多くの倒木も目にしました。あのような幹や枝の割け方は、台風だけがなしうるものです。例にもれず倒木も拾い、切断して規則的に一段ずつ並べ、同心円状にしました。これは儀式的な表現であり、環境への崇敬の念を表したものです。そしてこの材料もいつかは自然のサイクルの下で消えていくのです。
普段は海岸で色とりどりの海のゴミを見ていますが、ここでも色彩豊かな木の葉を目にすることができました。葉が散って冬眠するかの如くそびえたつ木々が白く覆われ、それが再び生まれ変わるのを私は待ち望んでいます。
そして、ここではほとんど話をしませんでした。本当は落ち葉の色のように情熱的な私ですが、言葉が通じず、木の上に止まっているカラスのように、ああああ…ということしかできませんでした。(日本語訳:Akiko ISHIMURA)
Special Thanks to:Mowu/ TOKO Studio
==English information is below:
stumbli ng toward discovery
Rahic Talif / Taiwan , Exchange AIR program 2018 Autumn
For the most part, my work focuses on relationships between the land, environment, and human experience, particularly on the ocean. Using my embodied labor and through collecting driftwood as my materials, over the past ten years I have not been able to ignore the existence of maritime refuse. As I collected sea plastics and other trash such as flip flops, nets, bricks, sea glass, and even steel rebar, I began to see their pure beauty.
Returning to solid ground, I have stepped onto Hokkaido. My visits to museums and art galleries provided much stimulus. The museums displayed Hokkaido’s past, its culture, its ethnic groups, and its present; but as a result, I have taken greater interest in Hokkaido’s environment: As I lived, ate, and drank in Hokkaido, I discovered much interesting packaging. I gathered these paper cartons and everyday food wrappers as materials for a collage in order to represent the way that ancient cultural traditions have been drowned in modernity’s deluge. By doing so, I want to display a contrast between natural cycles and human manufacturing.
However, I am most curious about everything to do with Hokkaido’s trees. When I first arrived, the trees were a riot of color. As the seasons have changed, the ground is blanketed in a quilt of orange, red, and yellow leaves. In my native language, we call fallen leaves rakaw, which is our word for trash. In the past, our only trash was made of such fallen leaves and shells. I also discovered that many fallen trees lain about in the wake of the summer’s typhoons. Only a typhoon could shear tree branches in this fashion. I collected these branches, piecing them together into an open spiral, which expresses a kind of ideology related to my own reverence for nature. Eventually, these materials will naturally decompose and disappear.
Although I always see multicolored scenes of sea trash along the beach, in this residence in Hokkaido, I have seen the vibrant colors of autumn leaves. Nonetheless, once the leaves have fallen, trees hibernate as they stand upright, which makes me long for the new life that emerges after they have been wrapped in white.
I have spoken no words here. In fact, however, I am as passionate as the color of autumn’s fallen leaves. Like the raven in the branches, I cannot use words to express myself but can only call “krra! krra! krra! ” across the forest.
https://rahictalif.com/